渡辺典久先生
郡山ラポール歯科 院長
感染症対策のため、マスクの着用が習慣となったいま「自分の口臭が気になる…」という人が急増しています。
「これまで気にしていなかったけれど、もしかしてわたしの息におう?」
と、不安に思っている人も多いのではないでしょうか。
実は、一時的な口臭は「生理的口臭」といって、誰にでも起こり得るもの。
起床直後や空腹時の口臭は、歯みがきや水分補給、食事で唾液が出てくれば次第に解消されます。
しかし、「ちゃんとケアしているのに、なかなか口臭が消えない!」という場合は、何らかの病気が潜んでいることも!
この記事では、気になる口臭の原因と今すぐできる口臭のセルフチェック方法、効果的な口臭対策についてお伝えしていきます。
まわりの人に不快な思いをさせてしまわないよう、いますぐ口臭を何とかしたい!というあなたは、ぜひ参考にしてみてくださいね。
そのニオイはどこから?口臭の原因はひとつじゃない!
「ちゃんと歯みがきしてるのに、すぐに口臭がしてきて困る!」というあなた。
実は、歯みがきだけでは消えない口臭も存在します。
口臭の原因は、大きく分けて5つに分類されます。
- 生理的口臭
- 病的口臭(口腔由来)
- 病的口臭(全身由来)
- 外因的口臭
- 心因性口臭
それぞれを詳しく見ていきましょう。
①生理的口臭
「生理的口臭」とは、起床直後や空腹時、緊張した時などに起こる口臭です。
プラーク(歯垢)の磨き残しや舌苔(ぜったい:舌についた細菌のかたまり)に加え、唾液の分泌が減り、細菌が増殖して口臭の原因となる物質がたくさん作られることで発生します。
生理的口臭は誰にでも起こりうる口臭です。
唾液の分泌量が増えれば口臭は弱まり、長時間続くことはありません。
そのほか、女性の場合、生理や妊娠などホルモンバランスの変化によって起きる口臭や、思春期に起こる口臭、更年期に起こる口臭なども生理的口臭に分類されます。
★生理的な口臭対策はこちら
②病的口臭(口腔由来)
むし歯や歯周病、ドライマウスなど、口腔内に関わる病気が原因で口臭が発生することもあります。
病的口臭の約90%が口腔由来といわれています。
歯周病
口腔由来の口臭の原因として多いのが歯周病です。
歯周病は、歯と歯ぐきの境目の「歯周ポケット」の清掃が行き届かず、そこに細菌がたまることによって引き起こされる炎症性疾患です。進行すると歯周ポケットが深くなり、歯ぐきや歯を支える骨が壊され、最終的には歯が抜け落ちてしまうこともあります。
歯周病が口臭の原因となるのは、歯周ポケットにたまった細菌が「メチルメルカプタン」というガスを発生させるからです。
また、腫れた歯肉から出てくる膿が強烈なニオイを発生させることもあります。
ドライマウス
ドライマウス(口腔乾燥症)とは、ストレスや薬の副作用などで唾液の分泌量が低下し「口の中が乾いている」症状のことです。
唾液の分泌量が減ると、自浄作用が低下して口の中の細菌が増えやすくなります。そのため、口臭も強まります。
さらに、食べかすや細菌が流されずに口内に残りプラーク(歯垢)がつきやすくなるため、むし歯や歯周病のリスクが上がり、さらなる口臭の原因にもなりかねません。
虫歯
むし歯が進行して歯に穴が開くと、穴に食べかすがたまりやすくなります。そこに細菌が繁殖することで食べかすが腐敗し、ニオイを発生させてしまうのです。
さらにむし歯が進行し、歯の神経まで到達すると、歯の神経が腐敗して強いニオイを放つことがあります。
★むし歯や歯周病など、口腔由来の口臭対策はこちら
また、子供の口臭の原因としてよくあげられるのが口呼吸。口呼吸が習慣化すると、ドライマウスと同じように口内が乾燥し、むし歯や歯周病、口臭の原因になります。
お子さまの口臭対策についてはこちらの記事をチェックしてみてくださいね。
③病的口臭(全身由来)
「病的口臭」には、全身の病気が由来のものもあります。
糖尿病や鼻や喉などの病気、呼吸器、消化器系の疾患など、病気の種類によってニオイの特徴もそれぞれ異なります。
全身由来の口臭はさまざまあり、専門医でなければ特定することが非常に困難です。
何らかの病気が疑われ口臭が気になる場合は、まずは内科のかかりつけ医に相談し、治療を行うことが先決です。
④外因的口臭
ニンニクやアルコールなど、ニオイの強いものを飲食したあとや、タバコを吸ったあとなどに起こる口臭です。
これらの口臭は一時的なもので、時間の経過とともに口臭は弱まります。
★飲食物や嗜好品で起こる口臭対策はこちら
⑤心因性口臭
心因性の要因によって、自分の口臭を疑ってしまう場合もあります。
仮性口臭症
口臭があると思いこんでいるものの、検査の結果、実際には社会的範囲を超えるような強い口臭が認められないものを「仮性口臭症」と呼びます。
歯科医院にて、カウンセリングを中心とした治療を受けましょう。
口臭恐怖症
「口臭恐怖症」とは、実際に口臭が強くなくても、他人のちょっとしたしぐさや行動から「自分には口臭がある」と強く思い込んでしまうことです。
あまりにも思い込みが強いと、他人を避けるようになり、対人恐怖症などの精神疾患に陥る可能性もあります。
この場合、心療内科などでカウンセリングを中心とした治療が必要です。
クサイと思われているかも!?口臭のセルフチェック方法
他人の口臭は気づきやすいですが、自分の口臭はなかなか気づきにくいもの。
まわりに不快な思いをさせているのではないかと思うと、不安になりますよね。
「自分の口臭がどのくらいあるのか気になる」という人は、まずは自宅で簡単にできるセルフチェック法で、口臭を確認してみましょう。
唾液のニオイを確認
ティッシュや綿棒を使って、舌の上や歯と歯ぐきの溝あたりの唾液をぬぐってみましょう。
付いた唾液のニオイを嗅いでみてください。
唾液のニオイがきつい場合、口臭も強い可能性が高いです。
コップやビニール袋を使って確認
コップやビニール袋に息を吐き、たまった息のニオイを確認してみましょう。
息を吐き、手などでフタをしてから、改めてニオイを嗅いでみるとわかりやすいですよ。
市販の口臭チェッカーを使って確認
市販の口臭チェッカー(ブレスチェッカー)で、口臭を測定することも可能です。
「はーっ」と息を吹きかけるだけで、ニオイの成分をチェッカーが検知し、口臭レベルをイラストや数字で表示してくれます。
製品ごとに測れる口臭レベルが異なりますが、高性能なものだと1〜100段階で判定できるものもあります。
ただし、簡易的な測定数値なので、あくまで目安として捉えましょう。
セルフチェックでは、口臭の原因までは特定できません。「しっかりと口臭の原因を知って治療したい」という場合は、歯科医院での口臭検査がおすすめです。
専門の「口臭測定器」を使って、硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドといった口臭物質を計測します。
口臭検査を受けることで口臭の原因も特定でき、適切な治療を受けることができますよ。
原因別にご紹介!おすすめの口臭対策
「今すぐ口臭を消したい!」「根本から口臭をなくしたい!」そんな時におすすめの口臭対策をご紹介します。
自宅で行えるものと、歯科医院などプロによるものがあるので、原因に合わせて上手に口臭対策を行いましょう。
生理的・外因的口臭にはセルフケアでの口臭対策
起床直後の口臭など「生理的口臭」と呼ばれる口臭や、食べ物や嗜好品による口臭は、日常的なセルフケアで予防することができます。
自宅で日常的に行える口臭対策法をいくつかご紹介します。
①歯磨き
口臭対策の基本は、やはり「正しい歯みがき」です。
口の中に食べかすなどが残っていると、細菌を増殖させ口臭の原因となります。
食事後や就寝前は、歯ブラシで食べかすやプラーク(歯垢)をしっかりと落としましょう。
口臭を気にするあまりゴシゴシと力を入れて磨くと、歯ブラシの毛が開いてプラークが落としづらくなったり、歯ぐきや歯の表面が傷ついたりすることも。
優しくていねいに1本1本磨いてあげることが大切です。
歯ブラシだけでなく、デンタルフロスも併用すると、歯垢除去率が高まりますよ。
正しい歯磨きについてくわしく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
②舌磨き
舌の上に溜まっている白い苔(こけ)のようなものは舌苔(ぜったい)と呼ばれる、細菌のかたまりです。
この細菌の塊が口臭を発生させる原因に。日々のケアできれいに取り除くことが大切です。
舌苔(ぜったい)は舌にこびりついているため、うがいをしただけでは取れません。
舌専用の舌ブラシや、やわらかい毛の歯ブラシを使い、「舌の奥から手前」に向かって取り除きましょう。舌はデリケートなので、歯磨き粉を使う必要はありません。
1日1回、起床後に行うのが効果的ですよ。
舌みがきについてくわしく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
③マウスウォッシュを使う
食後の歯みがきにプラスして、マウスウォッシュを併用するのも口臭予防に有効です。
使い方は簡単。適量を口に含み、20~30秒ほどクチュクチュとすすぎ、吐き出します。
最後に水ですすぐ必要がないため、歯みがきができないときににも便利ですよ。
口の中を浄化して口臭を予防することに加え、「医薬部外品」の製品であれば、口の中の細菌を減らし、むし歯や歯周病を予防してくれる成分が配合されているものもあります。
口臭対策におすすめの成分は?
マウスウォッシュのほか、歯磨き粉やデンタルリンスなどのオーラルケア製品を選ぶ際は、含まれる薬用成分にも注目してみましょう。
口臭対策に有効な薬用成分はこちら。
【殺菌成分】
- イソプロピルメチルフェノール(IPMP)
⇒歯周病菌、口臭の原因菌を殺菌する - 塩化セチルピリジニウム(CPC)
⇒歯周病菌を殺菌し、増殖を防ぐ - ラウロイルサルコシンNa(LSS)
塩化ベンゼトニウム
⇒歯周病菌を殺菌する
【抗炎症成分】
- β-グリチルレチン酸
⇒歯ぐきのはれを防ぐ - ε-アミノカプロン酸
トラネキサム酸
⇒歯ぐきのはれを予防し、出血を防ぐ - サリチル酸メチル
⇒歯ぐきの炎症を抑える
【血流改善成分】
- 塩化ナトリウム
⇒歯ぐきをひきしめる - トコフェノール酢酸エステル(ビタミンE)
⇒歯ぐきの血流を促す
【洗浄成分】
- ゼオライト
⇒歯垢や歯石をはがれやすくする
⇒口の中のニオイ成分を吸着する
【清涼成分】
- l-メントール
⇒口の中に清涼感を与えニオイを消す
④ガムやタブレットを噛む
ガムやタブレットを噛むと唾液がたくさん分泌されて口の中の自浄作用が働くため、口臭の予防ができます。
市販のガムやタブレットを選ぶ際は、むし歯の原因となる「糖類」や「果汁などの酸性物」が入っていないものがおすすめです。
パッケージに「糖類0g」「シュガーレス」と表記されたものを購入すると良いでしょう。
キシリトール入りのガムやタブレットなら、むし歯のもととなる細菌(おもにミュータンス菌)の数を減らす効果も高められますよ。
キシリトールについてくわしく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
⑤唾液腺のマッサージ
マッサージやエクササイズによって唾液の分泌を増やし、口臭を予防する方法もあります。
具体的には「唾液腺」を刺激することで、唾液の分泌量を増やします。
【唾液腺マッサージ】
まずは、口内にある3つの唾液腺、耳下腺(じかせん)、顎下腺(がくかせん)、耳下腺(ぜっかせん)を外側からマッサージしてみましょう。口臭が気になる起床時や空腹時、人と話す前などに行うのが効果的です。
- 耳下腺を刺激する
耳の横に指を当てて後ろから前に向かってゆっくり回します。(10回程度) - 顎下腺を刺激する
顎の下の柔らかい部分に親指をあて、耳の下から顎の下まで5か所ほどを順番に押しましょう。(各5回程度) - 舌下腺を刺激する
両手の親指で、顎の真下をグッと押します。(10回程度)
【舌回し運動】
「舌回し運動」も、唾液の分泌の促進に効果的です。
- 口を閉じたまま、舌の先で歯ぐきをなぞるように、時計回りに2秒に1回のペースで回します。慣れてきたら3秒に1回のペースで回しましょう。(10回程度)
- 同様の動作を反時計回りで行います。(10回程度)
この動作を1セットとし、2回行ってください。
舌を回すのがきついという方は、まずは5回ずつからはじめ、少しずつ回数を増やしていきながら20回連続して回せることを目標にしましょう。
毎食後に行うと、口臭予防だけでなく、咬み合わせのズレ防止や顔のたるみ予防効果も期待できますよ。
⑥よく噛んで食べる
咀嚼回数を増やすと唾液腺が刺激されるため、口臭予防につながります。
食事は、ゆっくりと味わって食べるようにしましょう。
なるべく噛みごたえのある食べものを選び、一口につき30回は噛むことを心がけるのも大切です。
梅干しやレモンなど酸味のある食べものも、唾液の分泌量が増えるので口臭予防に効果的ですよ。
⑦こまめに水分補給をする
口の中はつねに潤っていることが、口臭予防には理想的です。
口の中の乾きを感じる前に、こまめに水分補給をすることを心がけましょう。
また、水分をたくさん摂ることで、尿や汗とともににんにくやアルコールなどニオイの強い成分が排出しやすくなります。
水分補給には水がおすすめ。お茶やコーヒー、牛乳、砂糖や炭酸を含む飲料はなるべく避けましょう。
病的口臭(口腔由来)にはクリニックなどプロによる口臭対策
「セルフケアではなかなか口臭がなくならない!」という場合は、むし歯や歯周病といった口腔内の病気が原因かもしれません。
まずは歯科医院などで口臭検査や治療を受けることをおすすめします。
歯科医院などプロによる口臭対策で、口臭のお悩みを解決しましょう。
なお、全身由来の病的口臭や心因性口臭の場合は、専門のクリニックへ早めにご相談くださいね。
①定期的なクリーニング
歯科医院で行う歯のクリーニング(PMTC)とは、歯のプロフェッショナルである歯科医師や歯科衛生士による歯面清掃のこと。
内容は各医院によって若干異なりますが、歯垢や歯石の除去、歯の表面の磨き上げや研磨、歯のトリートメントなどを行います。
PMTCは予防目的のクリーニングなため原則保険が適用されず、歯科医院により料金が異なります。
- 目的:むし歯・歯周病・口臭などの予防、着色や汚れの除去
- 費用の目安(※):約8,000円~15,000円(60~90分)
※自社調べ(2021年11月調査)
毎日頑張って歯を磨いていても、磨き残しなく完璧に歯を磨けている人はごくわずか。
定期的に歯のクリーニングを受けることで、口臭の原因にもなりうる歯の頑固な汚れをしっかり除去し、むし歯や歯周病の早期発見にもつながります。
基本的には3~4か月に1度程度行いますが、口臭が気になる方は歯科医院に相談するのがよいでしょう。
磨き残しの原因は歯並びかも?
歯並びが悪いと、歯ブラシをすみずみまで行き渡らせることが難しく、磨き残しが多くなりがち。口臭の原因となる「むし歯」や「歯周病」にかかりやすくなります。
そんなときは、矯正歯科治療で歯並びをキレイにするのもひとつの手段です。
矯正歯科治療は審美の改善だけでなく、むし歯や歯周病の予防にもつながります。
◆ 前歯がガタガタしていたり、隙間があったりして「磨きにくい!」と感じる人は、前歯を対象に治療するキレイライン矯正をチェックしてみてくださいね。
②虫歯・歯周病の治療
むし歯や歯周病が進行している場合、早めに治療を受けましょう。放っておくと、どんどん進行して歯の神経が腐敗したり、歯周ポケットに細菌がたまったりすることで、さらなる悪臭を放つようになります。
口臭の原因がむし歯や歯周病にあるのかどうかを知るためにも、まずは歯科医院で診察を受けることをおすすめします。
③口臭外来などでの専門的な口臭治療
近年では、口臭の治療を専門に行う「口臭外来」を設けている歯科医院も増えています。
口臭外来では
- 口臭検査
- 歯科検診
- むし歯や歯周病などの治療
- PMTC(歯石・歯垢の除去、歯のトリートメントなど)
などを行い、口臭の改善を目指します。
まずは唾液検査、口臭測定、尿検査、舌診などの各種検査を行います。検査結果はすべて数値化されるため、口臭の原因を具体的に知ることができるでしょう。
歯科検診では、口腔内の状態を診たりレントゲン撮影をおこなったりして、むし歯や歯周病の有無を確認します。
検査結果を踏まえながら、一人ひとりの症状に合わせて適切な治療や指導を行っていきます。
その後は定期的な検査で口臭が改善されているかをチェックし、満足のいくレベルになったら、治療は終了です。
口臭治療は、保険適用外の自由診療となります。簡易的な検査のみであれば数千円程度で受けられますが、治療を含めた本格的なプランだと、数万円になることも。
決してお安い値段ではありませんが、口臭の原因を知って本気で治したいという方には、もっともおすすめな方法です。
原因に合わせた口臭ケアでクリーンな息を手に入れよう!
口臭の多くは、毎日のセルフケアで予防することができます。
生理的口臭のおもな原因は口の中の細菌。
日常的なデンタルケアで、プラーク(歯垢)や舌苔(舌についた細菌のかたまり)をしっかりと取り除くことがポイントです。
毎日のセルフケアをしっかり行えば、口臭だけでなく、むし歯や歯周病のリスクも減らすことができますよ。
また、むし歯や歯周病が原因の口臭が疑われる場合は、大切な歯を守るためにも、早めに歯科医院を受診しましょう。
自分の口臭の原因を正確に知りたいときは、専門の「口臭外来」を受診してみるのもおすすめです。
原因に合わせた口臭ケアを行い、スッキリ爽やかな息を目指しましょう!
※本記事は2024年4月時点での公式情報を元に編集したものです。最新の情報とは異なる可能性がありますので、ご注意ください。
※保険適用外の自由診療となります。
※掲載している料金はすべて税込み価格です。