キレイライン公式ブログ担当の小田です。
「ワイヤー矯正って歯に針金みたいなものを付けてるけど、あれはどんな仕組みなの?」
「どんな構造かイマイチわからないし、取れてしまうことはないのかな……」
歯列矯正と聞くと真っ先に思い浮かぶほど、ワイヤー矯正は昔からよく知られた治療法です。
歯の表面にブラケットという装置を取り付け、ブラケットに通したワイヤーの力を利用して歯並びを整えます。
でも、なぜワイヤーで歯が動くのかはよくわからないですよね。
矯正装置は見えている歯に取り付けますが、実は、実際に活躍するのは歯の根っことその周りにある歯周組織。
ワイヤーの力がかかると起こる歯周組織の反応を利用することで、歯を動かしていきます。
今回は、ワイヤー矯正の装置の構造や歯が動く仕組み、始める前に知っておきたいワイヤー矯正の治療の流れをくわしく解説します。
さらに、目立ちにくいワイヤー矯正の種類と特徴なども紹介していきます。
「マウスピース矯正のキレイラインがなぜワイヤー矯正の話?」
と思うかもしれませんが、ワイヤー矯正は重度の症状をはじめ、幅広い歯並びの悩みに対応できる優れた治療法。
歯列矯正を検討するうえで、ぜひ知っておいて欲しいのです。
もちろんマウスピース矯正とワイヤー矯正では、それぞれにメリットとデメリットがありますが、両者を知ることでご自身に合う治療方法の選択肢が広がります。
ワイヤー矯正について知りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
【ワイヤー矯正の仕組み】装置の構造と歯が動くメカニズム
ワイヤー矯正の歯に取り付けられた装置を見たことはあっても、「あれは何というもの?それでどうやって歯が動くの?」など、正直わからないことだらけで本当に効果があるのかも疑問に思いますよね。
ワイヤー矯正で歯の表面に取り付ける小さな装置は「ブラケット」と呼ばれるもの。
そこに「ワイヤー」を通して、動かしたい方向に適切な力を加えることで歯を移動させていきます。
ワイヤー矯正の中でも目立つイメージが先行しがちなのは、ブラケットとワイヤーを歯の表側に取り付ける「表側矯正」という方法。
装置を目につきにくい歯の裏側に取り付ける「裏側矯正」と呼ばれる方法もあります。
このあと、ワイヤー矯正の装置それぞれの役割や、どのようにして歯並びが整うのかをくわしく解説していきます。
ワイヤー矯正で使用する装置の役割
先にお話ししたように、ワイヤー矯正は「ブラケット」と「ワイヤー」の2つの装置を用いる方法です。
歯の表面に専用の接着剤でブラケットを装着してワイヤーを通し、外れないように結びつけて歯を動かしていきます。
まず、各装置の役割を見ていきましょう。
ブラケット|ワイヤーの力を歯に伝える
ブラケットとは、1本1本の歯の表面に直接取り付ける装置です。
ブラケットの中央にはスロットと呼ばれる溝がついており、その溝にワイヤーを通して力を伝えることで少しずつ歯を移動させていきます。
金属製のメタルブラケットが一般的ですが、歯に近い色合いで目立ちにくい審美ブラケットをはじめ、構造や材質が異なるブラケットもあります。
ワイヤー|弾性を利用して歯に力を加える
ブラケットに通すワイヤーは高い弾性がある金属製で、アーチワイヤーとも呼ばれます。
人間の歯並びはなだらかな曲線を描いているため、ワイヤーもアーチ型の曲線になっています。
ワイヤーは、ニッケルやチタン、ステンレスなどを使用した形状記憶合金です。
ブラケットの溝に通した形状記憶合金のワイヤーが元の形に戻ろうとする性質を利用して、移動するための力を歯に加えていきます。
一般的にはシルバーのワイヤーが多く用いられますが、白いコーティングを施した目立ちにくいホワイトワイヤーや、歯の色になじみやすいゴールドワイヤーなどもあります。
形状や太さ・材質はさまざまですが、歯の動き方や治療の段階によって適切なワイヤーを歯科医師が選んで使用します。
段階的にワイヤーを調整していくことで歯列を整える
歯列矯正で使用するワイヤーは、治療期間中ずっと同じものを使い続けるわけではありません。
治療を始めたばかりの頃には細いワイヤーで弱い力をかけ、ある程度歯並びが整ってきたら太く大きな力をかけられるワイヤーを使用するなど、口腔内の状態や歯の動きに合わせてワイヤーを調整・交換することで、歯列を理想的なものに整えていくのです。
◆ ワイヤー矯正の種類や仕組みなど、もっとくわしく知りたい方はこちらの記事をチェックしてみてください。マウスピース矯正との違いや「どっちを選べばいいの?」の疑問も解消しますよ。
【歯列矯正のメカニズム】力を加えて歯が動く仕組みって?
歯に直接取り付けるブラケットに通したワイヤーによって、歯に力を加えるワイヤー矯正。
大まかな装置の仕組みはわかったものの、「装置を取り付けた歯が一体どんなふうに動いていくのかがまだわからない…」と思いますよね。
つぎは、装置によって力を加えられた歯が、どのような仕組みで動くのかを説明します。
歯の根っこと骨の間にある「歯根膜」が活躍する
歯が動く仕組みの前に、まずは歯の周辺の構造を見てみましょう。
歯ぐきの中にある「歯根(しこん=歯の根っこ)」と歯を支える「歯槽骨(しそうこつ)」の間には、薄いクッションのような「歯根膜(しこんまく)」があります。
歯根膜は伸びたり縮んだりする弾力性があり、食べ物を噛む時に歯にかかる衝撃をやわらげるはたらきをする組織です。
歯列矯正では、歯の根っこと骨の間にある歯根膜の特性を利用して歯を動かしていきます。
歯根膜は常に一定の厚さを保とうとする
矯正装置を装着して歯に力がかかり始めると、その力が歯根膜にも伝わります。
下の図のように左側から矯正の力をかけると、歯の左側の歯根膜は引っ張られて引き伸ばされ、歯の右側の歯根膜は、圧迫されて縮んでしまいます。
しかし、歯根膜には常に一定の厚さを保とうとする性質があるため、引き伸ばされた左側の歯根膜も縮んだ右側の歯根膜も、元の厚さに戻ろうとするのです。
引き伸ばされてしまった左側の歯根膜は、元の厚さに縮むために骨を作ります。
このため、骨を再生させる「骨芽細胞」が活発になります。
一方、縮んでしまった右側の歯根膜は元の厚さに戻る必要があり、骨を溶かす「破骨細胞」が活発になります。
こうして、かかる力の方向に合わせて歯根膜が伸縮し、歯槽骨を作ったり溶かしたりを繰り返すことで、歯を理想の位置まで動かしていくのです。
歯に強い力を加えるのはNG
矯正装置によって歯が動く距離は、1ヶ月でおおよそ0.3〜1mmほどとごくわずかです。
個人差があるため一概には言えませんが、パッと見ても変化がわからないくらい徐々に移動しています。
「強い力を加えればそれだけ早く歯が動くのでは?」
と思うかもしれませんが、それは危険です。
歯の根っこや周辺の組織に大きな負担がかかり、お口の健康を損ねてしまいます。
骨が溶かされたり、新たに作られたりするのを待つ必要があるため、歯を動かせるスピードには限界があります。
歯科医師が口腔内の状態を確認しながら、適切な力がかかるように調整しているので、焦らずじっくり治療しましょう。
◆ 歯列矯正の治療期間についてはこちらの記事で詳しく解説しています。「何年も続ける自信がない…治療期間はどのくらい?早く終わらせる方法はない?」とためらっている方は、ぜひ参考にしてみてください。
歯列矯正においての歯の動かし方
歯を動かすとひとくちに言っても、その動かし方はさまざまです。
すきっ歯などの隙間を閉じる「平行移動」や、前後に倒れた歯のデコボコをそろえる「傾斜移動」など、生えている歯の数だけ動かし方も異なります。
ほかにも、ねじれている歯を回転させる「捻転」、歯ぐきに埋もれがちな歯を引き出す「挺出」、上方向に飛び出している歯を引っ込める「圧下」などがあります。
これらの動かし方を複雑に組み合わせることで、理想的な歯並びを目指すのです。
歯根膜が常に一定の厚さを保とうとする性質を利用して歯を動かす仕組みは、どのような装置を使う矯正歯科治療でも同じです。
ワイヤー矯正はワイヤーを調整しながら、マウスピース矯正ならマウスピースを交換しながら、少しずつ歯を動かしていきます。
ただし、矯正装置の種類によって得意とする歯の動き方や適応範囲が異なります。
◆ ワイヤー矯正
歯がワイヤーに沿うように動く平行移動。
咬み合わせも含めた大幅な歯の移動など、骨格的な問題がないほとんどの症状に適応できる。
◆ マウスピース矯正
歯の頭が倒れるように動く傾斜移動。
奥歯まで広範囲に動かそうとすると歯根が傾いたまま移動する可能性があり、部分的な歯並びを整えるのに適している。
このため、キレイラインではマウスピース矯正の特性を生かし、前歯を対象とした部分矯正を行っています。
もっと知りたい!ワイヤー矯正の仕組み
ワイヤー矯正の装置の仕組みや歯が動くメカニズムを見てきましたが、「ワイヤー矯正にも種類があるの?どんなふうに治療を進めていくのかな?」など、まだまだ疑問に思うこともありますよね。
ここでは、ワイヤー矯正の仕組みをもう少し深掘りしてみましょう。
矯正力を増すために追加治療を行うケースも
デコボコが大きい歯並びや、歯を並べるスペースを確保するのが難しい症状など、より矯正力が必要なケースでは追加治療を行うこともあります。
追加治療にはいくつかの種類がありますが、代表的なものとして「アンカースクリュー」や「ゴムかけ」などが挙げられます。
アンカースクリューは、一方向へ歯を動かす際の固定源となる金属製のネジです。
ゴムかけは、歯に取り付けたブラケットやアンカースクリューに医療用の顎間(がっかん)ゴムをかけ、縮む力を利用して歯を効果的に動かします。
追加治療を行うことで、抜歯が必要な症例でも抜歯せずに治療できたり、治療が長引きがちな難しい症例の治療期間を短くしたりできる可能性が期待できます。
ワイヤーを曲げる意味は?
ワイヤー矯正は、ワイヤーが元に戻ろうとする反発力を利用して歯並びを整えます。
ワイヤーを曲げるのは、患者様の症状に合わせて歯にかかる力を調整し、理想的な歯並びに近づけるためです。
ワイヤー矯正には、ワイヤーを曲げるための高い技術が必要な「スタンダードエッジワイズ法」と、あらかじめ平均的に湾曲させたアーチワイヤーを使用する「ストレートワイヤー法」の2種類があります。
多くの矯正歯科で用いられているのは、ワイヤーを曲げない治療が可能なストレートワイヤー法。
歯の角度や傾きなどの詳細なデータが組み込まれたブラケットを使用し、それぞれの症状に合わせた調整としてワイヤーを曲げる作業を行います。
ワイヤー矯正の種類による違いは?
ワイヤー矯正にはいくつかの種類があるので、それぞれの違いを紹介します。
表側矯正 | 裏側矯正 | ハーフリンガル矯正 |
---|---|---|
歯の表側に装置を取り付ける方法。 適応範囲が広く、さまざまな歯並びに対応できるが、目立ちやすいのが難点。 | 歯の裏側(舌側)に装置を取り付ける方法で、目立ちにくいのが利点。 表側矯正よりも適応範囲が限られることがあり、歯科医師の技術力が必要なため費用が高くなりがち。 表側矯正よりも違和感を感じやすく発音がしにくいことも。 | 上顎は裏側矯正・下顎を表側矯正で行う方法。 表側矯正よりも装置が目立ちにくく、裏側矯正よりも費用を抑えられる。 適応範囲がやや狭く、上下で歯みがきの方法を変える必要がある。 |
装置はいつ付ける?ワイヤー矯正の主な流れ
「矯正装置はいつどうやって付けるの?ワイヤーの調整はどれくらいの間隔?」
など、治療の流れを説明します。
①準備
歯列矯正は短くても数ヶ月、長ければ数年かかる治療です。
このため、矯正装置を取り付ける前の準備も大切なステップとなります。
ブラケットを取り付ける前に、まず歯をきれいにクリーニングします。
また、むし歯や歯周病がある場合には、装置を取り付ける前に治療を行う必要があります。
②矯正装置の取り付け
クリーニングした歯の表面に、専用接着剤でブラケットを固定します。
さらに、固定したブラケットの溝にワイヤーを通し、外れないようにゴムなどでブラケットと結びつけます。
ブラケットとワイヤーを装着すると、矯正治療のスタートです。
③ワイヤーの交換やメンテナンス
矯正治療中は定期的なワイヤーの調整・交換が必要です。
計画通りに歯が動いているかどうかをチェックして、治療段階や状態に合わせて調整したり、異なる形状や太さ・硬さのワイヤーに交換したりしていきます。
月に1回など、決められたスケジュールで通院しましょう。
④治療終了・保定
治療が終了したら、いよいよブラケット・ワイヤーを外します。
「思い通りの歯並びになった!」
と嬉しくなりますが、治療終了がゴールではありません。
治療が終了したら、矯正治療で整った歯並びが後戻りしないように、「保定装置(リテーナー)」を装着します。
歯は一生動き続けるため、リテーナ―はできる限り長い間つけることが推奨されています。
面倒に感じるかもしれませんが、きれいな口元を保つためには必須です。
歯を動かす仕組みはワイヤー矯正もマウスピース矯正も同じ
ワイヤー矯正は、幅広い症例に対応できる優れた矯正歯科治療です。
大きな歯並びのズレや咬み合わせの悪さなど、マウスピース矯正では対応が難しい症状でも、ワイヤー矯正なら治療できるケースがあります。
でも、ワイヤー矯正は、1本1本の歯に対して細やかな調整ができる一方で、歯科医師の豊富な経験や高い技術力が求められるのも事実です。
ワイヤー矯正とマウスピース矯正は、装置は異なっても歯を動かす仕組みは同じです。
一定の厚みを保とうとする歯根膜の性質を利用して、骨の吸収と再生を繰り返しながら少しずつ歯並びを整えていきます。
目立つイメージが先行するワイヤー矯正に対して、目立ちにくいマウスピース矯正を選びたいという人も増えています。
確かに、長い治療期間のことを考えると目立ちにくさは利点かもしれませんが、矯正歯科治療法にはそれぞれにメリットとデメリットがあり、対応できる症例も異なります。
歯科クリニックによっては複数の治療法に対応している場合もあるので、興味がある方はぜひ相談してみてください。
あなたにぴったりな治療法が見つかりますよ。
※本記事は2024年4月時点での公式情報を元に編集したものです。最新の情報とは異なる可能性がありますので、ご注意ください。